2026年9月3日、大阪にて「攻め続けられる歯科医院経営フォーラム2026」を開催しました。
当日は4名の方にご参加いただき、セミナー終了後の懇親会には2名の方にご参加いただきました。小規模な開催でしたが、その分、講師と参加者の距離が近く、それぞれの医院や経営課題について具体的に意見交換できる場となりました。
今回のテーマは、「攻め続けるために、まず守りを固める。」です。
採用、設備投資、新しい診療、DX、AI活用。歯科医院が成長するためには、さまざまな「攻め」が必要です。ただ、それを一度で終わらせず、環境が変化しても何度でも次の一手を打てる医院にするためには、その前提として「守り」が必要です。
Keynote|VUCA時代に必要な「レジリエンス経営」
冒頭のKeynoteでは、私から「VUCA時代の歯科医院に必要なレジリエンス経営」についてお話ししました。
現在の経営環境では、医院の中だけを見ていても十分ではありません。国際情勢、災害、サイバー攻撃、AIの進化など、医院の外で起きた出来事が、ある日突然、医院経営の前提条件を変える可能性があります。
未来を正確に予測することはできません。だからこそ必要なのは、変化を避けることではなく、変化しても動き続けられる状態をつくることです。盤面が変わっても次の一手を打ち続けられる。その状態を、今回のKeynoteでは「レジリエンス」と位置づけました。
レジリエンスの型としての「拡張経営機関」
その「レジリエンスの型」として提示したのが、拡張経営機関です。
これは、問題が起きたときだけ呼ぶコンサルタントでも、専門家の寄せ集めでも、院長の代わりに経営する組織でもありません。
医院メンバーとともに、経営力を高め続ける「半外半内」の組織です。
なぜ、このような仕組みが必要なのか。それは、経営課題がなくならないからです。
採用ができれば教育が課題になり、人が増えれば生産性が課題になり、DXを進めればセキュリティが課題になる。一つ解決すると、また別の場所に次の課題が現れます。
だから必要なのは、単発で問題を解決することではなく、循環を回し続ける力です。
しかも、院長が毎回すべてを指示しなくても、その循環が回り続ける状態をつくることが重要です。そのために必要な力として、今回、次の三つを提示しました。
持続的課題解決力
一つ解決すればまた次が現れる課題に対し、発見から改善までの循環を回し続ける力。
エコシステム力
医院・AI・オペレーター・外部専門家がつながり、一人の判断に依存しない経営基盤。
現預金・投資実現力
採用、教育、設備投資、DX、AI導入、再挑戦。次の一手を打つための余力を持つ力。
特に現預金は、単に貯めるためのものではありません。採用、教育、設備投資、DX、AI導入、再挑戦といった、「次の一手を打つための余力」です。
「Who? in the Loop」という問い
またAIについては、「Human in the Loop」から一歩踏み込み、「Who? in the Loop」という問いを提示しました。
重要なのは、人が介在しているかどうかではなく、誰が入っているのかです。参加者には、自院の経営課題を中心に、必要な人・機能・AIを配置し、「正のループ」を描く3分間のワークにも取り組んでいただきました。
そして、誤ったWhoが入れば、AIはその判断を高速・大量に増幅します。今回これを、「負の自動生産」と表現しました。
3名の専門家も「正のループ」の一部
Keynoteの後は、3名の専門家から、それぞれ異なる経営テーマについて講演いただきました。
太田 隆充 先生
特定社会保険労務士/社会保険労務士法人太田労務 代表
人が定着する医院の労務設計
キーワードは「読める職場」です。働く時間、休み、相談先が明確であること。
ポイント労働時間、有給休暇、就業規則、ハラスメント対策を一つの仕組みとして整えることが、人材定着の土台になります。
古本 敦士 先生
税理士/ふるもと会計事務所 所長
税務調査を恐れず、現預金を残す
税務調査の正しい理解と、過度な節税が資金繰りを圧迫するリスクについてお話しいただきました。
ポイント売上を「患者単価 × 患者数 × 来院回数」に分解し、複数の要素を少しずつ改善していく考え方も示されました。
米倉 博彦 先生
中小企業診断士/株式会社フロウシンク 代表取締役社長
補助金で実現する、未来への設備投資
設備投資は診療の質向上だけでなく、集患、省力化、人材定着にもつながること、また省力化補助金の制度変更によって歯科医院での活用可能性が広がっていることが紹介されました。
ポイント補助金には給与増加など採択後の要件もあり、単に「使える制度」ではなく、数年先の経営計画と一体で考える必要があります。
二つの「歯科チーム」立ち上げへ
今回のフォーラムを通じて改めて確認できたのは、歯科医院の経営課題は、一つの専門領域だけでは解決できないということです。
人・労務、財務・現預金、投資・補助金。それぞれの専門家が別々に関わるのではなく、医院、AI、オペレーター、外部専門家がつながり、課題発見から実行、振り返りまでを循環させていく。
今回登壇いただいた3名の先生も、Keynoteで示した「拡張経営機関」の一部として位置づけました。
参加者4名、懇親会2名という小さなスタートではありましたが、講師と参加者の間に具体的な対話が生まれ、これから立ち上げを進める二つの「歯科チーム」に向けても、良いスタートを切ることができました。
目指しているのは、セミナーを開催し続けることではありません。
何が起きても次の一手を打てる歯科医院を、
チームで支える仕組みをつくること。
9月3日は、その構想を実際の場で動かし始めた一日となりました。